正式なタイトルは、「ギトリス バイオリン名曲ア・ラ・カルト」
これでギトリスについて書くのは3度目(笑)
何だか気に入ってしまっている。
基本的に、バイオリンの音色は耳に突き刺さる感じであまり好きではないのだが。
最初に聞いたのは、澁谷のレコード店(hmvだったか)で、店内に流れている協奏曲の音色に惹かれての事だった。Now playingの所に置かれていたその2枚組CDセットを購入。もう20年も前の事になる。それ以前には名前を聞いた事があるかないか、というレベルでほとんど知らなかった。それ以来その協奏曲のセットは愛聴している。
前にも書いたが、この人の音色を聞いているとなんだか気持ちよくなる、というあまり音楽的ではない部分で気に入って聞いてきた。それ以降、この人のCDは全く購入しなかった。余り見かけなかったし。
所が、市川団十郎一座のフランス公演を見に来ているのをニュースで偶然に見たのを切っ掛けに調べてみたら、良く日本には公演で来ていたらしい。もうはるか昔の人だと思っていた(笑)。CDの発売も若干あったので久しぶりに購入した。
収録されているのは、1カバティーナ、2歌の翼に、3タイスの瞑想曲、4踊る人形、5ロンドンデリーの歌、6美しきロスマリン、7亜麻色の髪の乙女、8ウイーン奇想曲、9ホラ・スタッカート、10愛のあいさつ、11感傷的なワルツ、12愛の喜び、13ニーグン、14ユーモレスク、15べートーベンの主題によるロンディーノ、16シシリエンヌ、17金婚式、18メロディー作品42、19愛の悲しみ、20ツィゴイネルワイゼン普段こういった曲をわざわざ購入して聞くことはないし、あえて時間を取ってまで聞く物ではないだろうと普通思う。コンサートのアンコールとか、喫茶店やレストランとかで流れていればいいような音楽だろう。ずっと昔クラッシックを聴き始めた頃、クライスラーが自身で弾いたレコードを買った事があるが、それ以来である。クライスラーのはほんとに軽く可愛らしく、まあ、楽しい音楽だねって印象だった。あまり繰り返し聞く物でもなかった。
しかし、ギトリスのは違う。何だか、重くて深いのだ。ひいきにしてるだけだろうと思われるだろうけど、別にそういったものを求めて買ったのではなかった。どんな演奏なんだろうと軽い気持ちでかっただけだった。しかし、聞いてみると妙に重く心の中に沈んで行く。暗いわけじゃなく、何か心の中に固いものとして残ってしまうような演奏なのだ。ほんとに不思議な気がした。
おそらく、曲に対して真摯に対峙してのことなのだろうと思う。もの凄く誠実な人なのではないだろうか。東北震災の直後に来てチャリティコンサートなどをやっていたと聞いたせいもあるだろうけど。また上記の協奏曲と同様、音色は心地よい。
「愛の喜び」にしたって明るいだけの一辺倒じゃない。第一部の第2主題や中間部など、モノログ調、あるいは対話風で、何かを言おうとしているといった雰囲気で、軽く聞き流せるような演奏ではなくなっている。
「愛の悲しみ」も、ただ単に感傷的な曲ではなく、気持ちを訴えかけている音楽となっている。それは
「カバティーナ」や
「タイスの瞑想曲」、
「踊る人形」、
「美しいロスマリン」、その他全てがそうだ。聞いてて思ったのだが、何かを語ろうとしているのだ。言葉を裏に持って演奏しているのではないだろうか。
「感傷的なワルツ」の口ごもったような演奏など典型。
また、
「ホラスタッカート」やブロッホ作曲の
「ニーグン」などの民族的な曲もその情念をしっかり伝えてると思う。
「歌の翼」、「ロンドンデリーの歌」、「ウイーン奇想曲」などは、もはやバイオリンソナタレベルに重く劇的でしかも煌びやかである。彼の持つ技術と語りへの意思が合体した良い演奏だと思う
この中で好きなのを3つ選べといわれたら、
歌の翼に、ニーグン、感傷的なワルツかなあ。
ロンドンデリーの歌やユーモレスク、カバティーナ、シシリエンヌもいいのだが。
ま、私はバイオリン演奏には全く無知だから、何ごとをも言える立場ではないというのが前提ではあるが(笑)。バイオリンなんてほとんど触った事すらないレベル。友人でアマチュアのオーケストラの団員がいて、一度だけ触らせて貰った事があるだけ。ドレミファソラシド、と上がっていって、そのままドシラソファミレドと下がって、元の音に合致したので満足した(笑)。ギターを弾いていたことがあったので、大体の指の位置は勘で分かった。要するに弦の長さが、等比数列になればいいのだ(笑)。
バイオリン奏者の演奏会は一度、
ツェートマイヤーと大阪センチュリー交響楽団の演奏会に行った事があるだけ。ホリガー作曲の超難解なバイオリン協奏曲を完全暗譜で(当たり前だが)弾ききり、最後が見事に合って終わったのには驚愕した。コンサートの最後、CDを買って列に並びサインを貰ったのは、後にも先にもこの人だけ(笑)。寡黙な難しそうな人に見えた。次にギトリスが来た時は是非、なんとしてでも行ってサインを貰いたいものだ。
ちなみに、一般的に評判のいい、大分音楽祭で
アルゲリッチと競演したべートーベンの
クロイツェルソナタとかは、あまり好きではない。同時に買って、むしろこっちが目的で名曲集の方は付け足しであったのだが。なんというか、おとなしい小動物に、獰猛な恐竜が襲いかかってるようで聞いていていたたまれない(笑)。恐竜というのは勿論(略
(以上2月12日記入)
(4/4追記)
偶然、ネットで5月にコンサートがあるのを発見、慌てて購入した。良かったあ。紀尾井ホールだし、良さそう。ずっと昔、なんだったか、ヘルマンプライの演奏会だったか、スメタナSQだったかなあ、行った記憶がある。
行ってきた感想ギトリスのシャコンヌギトリス協奏曲集
テーマ : 本日のCD・レコード
ジャンル : 音楽